再掲 落とした小銭と勇気

仕事帰り、まだ外はうだるような暑さだ。風は生暖かく、地べたから蒸し返すような暑さが伝わってくる。駅の自由通路に行き交う人々達は、口々に皆、「暑い、暑い」と言っているよな、そんな帰宅時のことだった。僕もそんな暑さに耐えかねて自販機で、冷えたドリンクを買うことにした。目の見えないもんがどうやって自販機の場所を探すかと言えば、歩きなれた道ならば、低い機械音をかすかに立て、いつも自販機は決まったその場所にある。僕は、汗ばむ手で、小銭を一枚、また一枚とコイン投入口に入れていった。そんな最中のこと僕は、小銭をばらまいてしまった。
地面に散らばった小銭を探す僕。手のひらを生暖かいそこに這わせると、焦る気持ちと周囲の目が気になり汗が吹きだしてくる。少し離れた方から子供らが、くすくす笑う声が聞こえてきた。「め○らだぜ」とか、言ってるし、あきらかに僕を蔑んでいる。腹が立ったけど、そこは我慢して僕は、落とした小銭を探した。
そんなときだった。「若い人、あんな人達ばかりじゃないから」、そういって、女学生らしき人が、落とした小銭を拾い集めて、僕の汚れた手のひらに、握手をするかのようにしっかりと、手渡してくれた。僕は、すぐにお礼を言ったけど、その人は無言のまま賭けていってしまった。
もうだいぶ前の出来事で、そのときの記憶はだんだん薄れるけれどあの小さなか細い手のひらの温もりと、あの人の勇気を優しさは忘れない。
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ちゃれんじぃ

Author:ちゃれんじぃ
毎日が色んなことへの挑戦だ!白杖への誤解や理解、日々のささいな出来事や感じていることを視覚障害者の視点からつぶやいています。アラヒフ世代・津軽三味線初心者・ジョギング・野球観賞・70年代フォーク&ロック・古きよき昭和をこよなく愛する全盲の伯父さんです。。

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