掴まれた腕 2

町の小さな親切に感謝の気持ちを忘れずにいたり、物事に謙虚な気持ちでいると、世の中そうは住みにくくない。見た目はちょいといかつい、こんな五十路の僕にだって親切にしてくれる人はけっこういる。でもそんな心がけをしていても一度だけ切れてしまったことがある。
その朝がそうだった。通勤の路地で工事をしていて、そこに差し掛かった時にいきなり誰かに無言で腕をむんずと掴まれて引きずられたのだ。けっこう強い力だった。

「はなせよ」、「危ないんですよ」、僕とそいつはちょいとした口論になった。そこに工事の責任者だという男が割って入ってきた。「何があったんですか」、男が言った。
僕はいきなり腕を掴まれて驚いたこと、先に声を掛けてほしかった思いを話した。僕の腕を掴んだのは、ガードマンで、どう声を掛けてよいやらわからなかった、止めているのに、僕が無理矢理通ろうとしたと主張する。
話を黙って聞いていた男が口を開く、「あれHさんでねえの、俺、息子さんの同級のAっす」、驚いた!息子が小さい頃によく家に遊びに来たAだ。
Aとは20年ぶりくらいの再会だ。田舎ならではのそんな展開に、その場の雰囲気も和やかになっていき、事態は終息に向かったのであった。
聞けばAは土木屋の跡取りとして頑張っているそうだ。僕は立派になったAに関心しながらも若社長であろうが何であろうが、僕に取っては子供みたいなものだ、しっかり説教してやりましたよ。
目が見えない云々ではなくていきなり人の体に触れることは理不尽であること。声を掛けるにも視覚障害者だからと身構えず普通に、「工事中ですよ」、そう声を掛けてくれと教えてやりました。
後は、困っていることや手を貸してもらいたい時には、こちらからお願いするから、その時には協力してほしいことを伝えました。
Aとガードマンは素直に僕の話を聞いてくれたことが嬉しかったです。
最後に僕は、ガードマンに大きな声をあげてしまったことを謝りました。
「ごめんなさい」の一言に、「気をつけていってらっしゃい」、そう明るい声で彼は僕を見送ってくれた。
※緊急時の時にはかまわず抱きついてでも止めてくれとお願いしときました。
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プロフィール

ちゃれんじぃ

Author:ちゃれんじぃ
毎日が色んなことへの挑戦だ!白杖への誤解や理解、日々のささいな出来事や感じていることを視覚障害者の視点からつぶやいています。アラヒフ世代・津軽三味線初心者・ジョギング・野球観賞・70年代フォーク&ロック・古きよき昭和をこよなく愛する全盲の伯父さんです。。

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