もしもを一度だけ言えるなら

姉の家に同居しているお袋の肩揉みしてきた。今年83歳になる僕の母親だ。物忘れは仕方ないが足腰は、まだまだ達者で暇さえあれば庭いじりをしている。
小さくなった肩を揉みながらお袋の昔話を聞くことを僕は親孝行のひとつにしている。お袋は何度も同じ話をする。僕が生まれた時のことや家族旅行の思い出、他界した親父のことをよく話す。
僕は何度も聞かされるそんな話に相槌を打ちながら肩を揉む。
そんなところに姉が、「お母さんまた同じ話をして」と、強い物言いで口をはさむ。
面倒見もよく優しく温厚な姉なのだが同居していると介護のストレスもあるのだろう。
僕はそんな姉に、「お袋のこと色々押しつけて悪いな」と母と同居できない後ろめたさを伝える。
お袋はそんな姉弟のやり取りに遠くなった耳を傾けて、「早くとうちゃんに迎えに来てもらおうね~」、そう、ぽつりと言う。
しばらくみんなして黙り込んでいると、お袋の補聴器がピーッと鳴った。
母ちゃんこれくらいの親孝行しかしてあげられなくてごめんな。
「もしも」を一度だけ言えるなら一度だけ言いたいことがある。
母ちゃんと姉ちゃんを温泉に連れて行ってあげたい・・・
もしも僕の目が見えていたら僕が運転する車で連れて行ってあげたい・・・二人を乗せて。
それが僕の「もしも」。
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プロフィール

ちゃれんじぃ

Author:ちゃれんじぃ
毎日が色んなことへの挑戦だ!白杖への誤解や理解、日々のささいな出来事や感じていることを視覚障害者の視点からつぶやいています。アラヒフ世代・津軽三味線初心者・ジョギング・野球観賞・70年代フォーク&ロック・古きよき昭和をこよなく愛する全盲の伯父さんです。。

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