小さな親切と小さな男の子

その日僕は、自宅がある最寄り駅のホームに一人で電車を降りた。
都心で丸一日を過ごした帰りで一呼吸おいて吸い込んだ空気がやけに旨く感じる秋の夕暮れであった。
電車をやり過ごし、人の流れや階段のある方向を確かめて僕はゆっくりと歩みを進めた。
人々の雑談に混じって僕が突く杖のコツコツという軽い音が響く。
そんな音につられてか、盲目の爺が気にとまったのか、五つ六つくらいの男の子がこそっと言った。
「ママ、あの白い棒なーに?」。
母親らしき人は遠慮がちの小声で男の子に何か話をしている。
「あの叔父ちゃん目が見えないの?」男の子が聞く。。
母親、僕に向かって「すいません。この子ったら」。
僕は、いいんですよと 苦笑いで返す。
「あんな人を見たら声をかけなきゃ駄目って先生がいったよ」。
男の子が続ける「あっ!ぶつかりそう。危ないよ、ママ」。
母親、僕に向かって「本当にすいません」。
僕、「いえいえ、優しい子供さんですねー」。
「僕はいい子だな」と男の子に僕は言った。
男の子が「何かお手伝いしましょうかって聞くんだよ。ママ」って言ってるし。
母親は、困惑しながら「私につかまりますか?」と聞いてきた。
僕は男の子に、「叔父ちゃんを改札まで連れていっておくれ」と言ってみた。
すると小さな手が僕の空いている手をつかんだ。
男の子は何を話しかけても「うん」と恥ずかしそうに返事をするだけだったが僕を改札口まで手引きしてくれた。
親子と別れ際に僕は、男の子の顔の高さに腰を落として「僕、ありがとうな」と優しくお礼を言った。
そして親子を見送る僕。
「ママ、いいことをしたねー」と男の子の声が聞こえてきた。田舎の駅ロータリーのあちこちから秋の虫の声がしていた。
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プロフィール

ちゃれんじぃ

Author:ちゃれんじぃ
毎日が色んなことへの挑戦だ!白杖への誤解や理解、日々のささいな出来事や感じていることを視覚障害者の視点からつぶやいています。アラヒフ世代・津軽三味線初心者・ジョギング・野球観賞・70年代フォーク&ロック・古きよき昭和をこよなく愛する全盲の伯父さんです。。

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