さよなら 無人駅とカール叔父さん

野鳥のさえずりを誘導ベルの音と勘違いしてしまうような田舎の無人駅に降り立った僕の耳に、線路向こうから突然、オッサンの大きな声が飛び込んできた。
出口はそっちじゃないよ。もっと左。行き過ぎ。そこそこ。と、誰もいないホームの僕をちょいと離れたところから声で誘導してくれたオッサンの話の続きです。
オッサンは、その次の日も、またその次の日も僕が電車を降りると線路向こうから大きな声で誘導してくれた。
そんな光景が何日か続いて、ある日からオッサンの声がしなくなった。
その頃になると僕も白杖を頼りに出札口を抜けられるようになってた。
その朝、木造の小さな駅舎の外に出ると誰かに肩をぽんと叩かれた。
「だいぶ上手になったじゃないか」、オッサンだった。
僕らはどちらからでもなく握手をしてた。オッサンの手はごつくて、堅くて、グローブのようだった。
聞けばオッサンは、線路向こうの畑でブロッコリーなどの野菜を作っている人だった。
その日から僕らは電車待ちの時間にホームのベンチで話しをしたり、線路越しに挨拶をした。
僕は目が見えないのでいつもオッサンから気さくに声を掛けてくれたのは言うまでもないけれど。
僕が前の職場を辞める日の夕方もオッサンは駅にきてくれた。
いつも麦わら帽子をかぶってたオッサン。首にタオルを巻いてたオッサン。カール叔父さんみたいに陽気なオッサン。
僕は、ブロッコリーを食べるとオッサンのことを思い出す。このブロッコリーは、オッサンが作ったものかもって思う。
おわり
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プロフィール

ちゃれんじぃ

Author:ちゃれんじぃ
毎日が色んなことへの挑戦だ!白杖への誤解や理解、日々のささいな出来事や感じていることを視覚障害者の視点からつぶやいています。アラヒフ世代・津軽三味線初心者・ジョギング・野球観賞・70年代フォーク&ロック・古きよき昭和をこよなく愛する全盲の伯父さんです。。

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