悲しいクリスマスプレゼント

忘れられないクリスマスがある。僕にまだ視力がちょっとあって長男が小学校低学年で、長女が保育園の年長さんだった頃の古い話だ。
その日は、子供達を連れてクリスマスのプレゼントを買いに都内に電車で出かけた。
そんな僕の家族に友人が同行することになった。友人は僕と同世代の全盲の男だ。
友人は自分の甥っ子にやはりプレゼントを買ってあげたいので一緒に連れていってほしいとのことだった。
友人は一人ではこうした買い物はできないので快く引き受けた。
そんなわけで女房は留守番だ。僕の視力では女房と友人の二人の全盲を手引きして、子供達の面倒は見られない。
そうしたことから女房も友人の頼みを優先して自分は同行しないことにした。
東京はいつきてもお祭りみたいに賑やかだ。僕は僕の肩につかまる友人をぶつけないように、子供達とはぐれないように必死である。
「お兄ちゃん、妹の手を離さないでしっかりついておいで」と、僕は子供達に声を掛けながら駅や道の人ごみを歩いた。
僕たちは一件のおもちゃ屋に入った。店内は人ごみでごった返している。長男が娘の世話をしながら玩具を物色してた。
僕はといえば、友人をガイドしながら友人に玩具をあれこれ説明して店内を移動した。
子供達がそれぞれほしい玩具を抱えて持ってきた。嬉しそうな満面の笑顔とキラキラと輝く兄妹の顔は今でもはっきり覚えている。
先に子供達の買い物を済ませた。子供達は買った包みを大事そうに抱えて他の玩具を見たりしておとな達の買い物が終わるのを待っていた。
友人の買い物を終えてそんな子供達のところへ戻った。ところが娘が買ったばかりの包みを持ってない!
娘はどうやら他の玩具に気を取られているうちに包みをどこかにおいてしまったらしかった。
後の祭りだった。店内を探しても店員に聞いても紛失物の届けはなかった。
それでもあきらめきれない半盲の僕は人ごみの店内を隅々まで探したけどなかった。
店の出口で足早に出て行く怪しげな親子を見た。
父親らしきそいつが娘が買った物と同じ大きさの包みを持ってた。
一緒にいたうちの子供達と同じ年くらいの兄妹の会話が耳に残っている。
「それ誰の?」、「何で帰るの?何にも買ってないよ」と、その子供らは男に不可思議なことを聞いていた。
僕が、「あの?ちょっと」と声を掛けるとその親子らしき三人は一瞬足を止めて、僕の顔を見たが人ごみに消えた。
我が子の待つところに戻った僕は、兄妹に初めてゲンコツをひとつづつくらわした。
長男にはしっかり妹を見ていなきゃだめでしょ?娘にはしっかり持っていなきゃだめでしょ?と親の身勝手な気持ちを拳に込めた。
こうしたことは子供達から目を鼻した僕にも責任がある。だからというわけでもないが娘には失ったものと同じ玩具を買ってあげた僕は、どうしようもない親バカである。
アニメの世界でセーラー服を着た美少女戦士達が活躍していた頃の古い話である。
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プロフィール

ちゃれんじぃ

Author:ちゃれんじぃ
毎日が色んなことへの挑戦だ!白杖への誤解や理解、日々のささいな出来事や感じていることを視覚障害者の視点からつぶやいています。アラヒフ世代・津軽三味線初心者・ジョギング・野球観賞・70年代フォーク&ロック・古きよき昭和をこよなく愛する全盲の伯父さんです。。

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